【第3弾】2024年問題で本当に起きていること

コンサルティング

── 現場の変化を“構造”として理解する**

はじめに:2024年問題は「危機」ではなく、“物語”である

2024年問題は、世間で語られているほど劇的な事件ではない。
むしろ、語られ方そのものが“物語化”されている。

危機を煽る言葉は派手だが、現場の経営者に直接会って話を聞くと、
そのどれもが実態と微妙にズレていることに気づく。

私はこの一年、複数の運送会社の社長や幹部に会い、
社長室で、倉庫で、配車室で、“生の声”を聞いてきた。

そこで見えてきたのは、2024年問題とは「制度の問題」ではなく、
静かに進む“輸送能力の縮退”という構造変化だった
という事実だ。

そして何より奇妙なのは、この縮退が進んでいるにもかかわらず、
現場からは悲鳴がほとんど聞こえてこないことだ。

本当に困っている会社ほど声を上げない。理由は3つほどある。
・余裕がないからだ。
・荷主に遠慮があるからだ。
・情報発信の文化がないからだ。

だから、表面的には静かだ。
しかし、静かだからといって、何も起きていないわけではない。
むしろ、静かに、確実に、
物流の前提が書き換わっている。


長距離が“成立しない”という現実

ある社長は、長距離輸送についてこう語った。

「長距離はもう無理。13時間で回せる範囲だけに絞った方が利益が残る。」

これは悲観ではない。むしろ、冷静な構造理解だ。

物流はこれまで「距離で稼ぐ産業」だった。
走れば走るほど売上が立つ。
だから、長距離は“稼ぎ頭”だった。

しかし今は違う。
拘束時間が制約になる以上、長距離は構造的に割に合わない。

制度が変わったからではない。
制度が変わったことで、見て見ぬふりをしていた“非効率”が露呈しただけだ。

撤退は合理的な経営判断である。
むしろ、撤退できない会社こそ危うい。


夜間便の“価値”が消えた

夜間は渋滞がないから効率的 ~ これは過去の常識だ。

しかし今は、夜間に走るほど拘束時間が伸びるため、ドライバーの確保が難しくなる。

夜間便は、もはや「高付加価値サービス」へと再定義すべき領域になった。

それでもなお、「夜間の方が効率的だろう」という荷主の思い込みは根強い。
だが、現場の計算はもっと冷徹だ。

夜間は効率的どころか、最も割に合わない時間帯になっている。


拘束時間が“生産性の天井”を決める時代

制度によって、1人あたりの生産性が強制的に下がった。

これは会社努力ではどうにもならない。だから、荷主の
「効率化すればなんとかなる」
という期待は、根本的にズレている。

必要なのは効率化ではなく、前提の書き換えだ。


ドライバー供給は“戻らない”

・若手は入らない。
・中高年は抜けていく。
・免許制度は厳しくなる。

これは制度の問題ではなく、市場そのものが縮退している現実だ。

ある社長はこう語った。

「70代のベテランが働ける環境を作るしかない。」

これは“高齢化対応”ではない。
市場構造への適応である。


小口多頻度は“最初に破綻する領域”

EC需要は増える。
しかし配送能力は減る。

最も割に合わないのは、小口・多頻度・即日だ。

これは2024年問題とは関係ない。市場の限界が露呈しただけだ。


では、2024年問題で本来すべきだった“構造改革”とは何か?

私は複数の経営者の話を聞き、現場の数字を見て、配車の実態を見て、
ひとつの結論に至った。

物流会社が本来すべきだった構造改革は、
たった3つしかない。


1. 時間構造の再設計

・どの時間帯の仕事が価値が高いのか。
・どの荷主が時間を奪うのか。
・どのルートが時間効率を破壊しているのか。

ある社長はこう語った。

「地場で1日2往復の方が、長距離より利益が残る。」

これは“撤退”ではなく、時間構造の最適化である。


2. 収益構造(料金体系)の再設計

距離ではなく、拘束時間で料金を設計すべき時代だ。

待機、積み下ろし、夜間拘束、荷主のオペレーション品質。

これらが利益を決める。

ある社長は、ある案件についてこう語った。

「コスト削減しか言わない荷主は、やる価値がない。」

“断る勇気”こそが、収益構造改革の第一歩だ。


3. 事業構造(やる仕事の選択)の再定義

2024年問題は、
“全部の仕事を請け続ける時代の終わり”を意味していた。

ある社長はこう語った。

「単体では赤字でも、組み合わせれば黒字になる案件はある。」

これは、事業構造の再設計をすべき時がきたことを現わすのものだ。


他社が捨てた“現場力”こそ最大の参入障壁である

自動化・パレット化が進む中で、ある会社はあえて“アナログ”を残した。

バラ積み・バラ卸し、ユニック作業、高難易度の荷扱い。
他社が嫌がる領域だが、そこにこそ高単価と指名買いが生まれる。

ある社長はこう語った。

「現場の苦労を厭わない体制こそ、適正運賃と指名買いを生む。」

これは“根性論”ではない。現場力の資産化である。


人材確保は“給与”ではなく“業務設計”で決まる

70代のベテランが働ける環境を作る。
2t平ボディへのシフト、フォークリフト前提の荷役、定時定期運行の導入。

これは“高齢者活用”ではなく、持続可能な業務設計である。

また、某社のアパレル出荷現場の混乱を救ったのはデジタルではなく、
20枚のセーターを数えるなら「5個ずつの山を4つ作る」という原理原則だった。

「人間は5枚までしか正確に数えられない。」

これは、人間をミスから救う標準化である。


結論:2024年問題は“危機”ではなく、“構造変化の露呈”である

2024年問題とは、“危機”ではなく、“構造の変化が露呈しただけ”である。

そして、構造を見直した会社だけが、次の100年を生き残る。

・時間構造を再設計した会社。
・収益構造を再定義した会社。
・事業構造を選び直した会社。
・現場力を資産化した会社。
・持続可能な業務設計をした会社。

これらの会社は、2024年問題を“追い風”に変えている。

逆に、制度の問題としてしか捉えなかった会社は、構造改革を見逃した。

ただ単に、そういうことが起きている時代なのだ。


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