2026年4月、改正物流効率化法の全面施行により、一定規模以上の荷主企業にはCLO(物流統括管理者)の選任が義務づけられました。
すでにCLOを選任した企業も多いでしょう。
中長期計画の策定を始めた。
荷待ち時間を調べた。
積載率を計測した。
物流DXの検討も始めた。
「うちも、ちゃんと対応していますよ」
そういう会社もあると思います。
しかし私は、少し違うことを心配しています。
CLOを選任したことで、安心してしまってはいないでしょうか。
今日は、大手・中堅製造メーカーの経営者の皆さんに、3つだけ質問したいと思います。
難しい質問ではありません。
ぜひ、自社のCLOを思い浮かべながら考えてみてください。
問い① あなたの会社のCLOは、営業部長に「NO」と言えますか?
営業部門の使命は、売上をつくることです。
だから、お客様から、
「明日届けてほしい」
「この時間に届けてほしい」
「少量だけど運んでほしい」
と言われれば、何とか応えようとします。
営業としては当然です。
問題は、その約束の後です。
営業が約束した納品条件を、物流部門が何とかして実現する。
トラックが見つからなければ探す。
積載率が悪くても走らせる。
急な注文にも対応する。
その積み重ねによって、お客様へのサービスは維持されてきました。
しかし、ドライバー不足が深刻化し、物流コストが上昇し続ける時代に、それをいつまで続けられるでしょうか。
そこでCLOです。
営業部長から、
「このお客様だけは特別だから」
と言われたとき、
「それはできません」
と言えるでしょうか。
物流部長なら、難しいかもしれません。
営業部長と物流部長。
同じ部長同士です。
しかも一方は売上をつくり、一方はコストを使う部門だと見られてきました。
だからこそ、CLOは単なる「偉くなった物流部長」であってはいけないのです。
営業、生産、購買、物流。
それぞれの事情を超えて、会社全体にとって何が正しいのかを判断する。
そのためのCLOではないでしょうか。
問い② あなたの会社のCLOは、会社のお金を動かせますか?
物流改革には、お金がかかります。
バース予約システムを導入する。
物流設備を更新する。
パレット化を進める。
物流拠点そのものを再編する。
場合によっては、製造設備や情報システムまで変えなければならないかもしれません。
ところが、
「物流部の今年度予算では無理です」
となったらどうでしょう。
来年度まで待つのでしょうか。
私は、それではCLOを置いた意味が半分なくなってしまうと思っています。
CLOは、物流部門の予算を管理する人ではありません。
必要であれば、
「ここへ経営資源を投入するべきです」
と経営会議で主張し、会社のお金を動かす。
物流の改善によって、会社全体の利益がどう変わるのか。
将来の事業継続にどんな影響があるのか。
そこまで見て投資判断に関与する。
だからCLOには、「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位」が求められているのだと思います。
問い③ あなたの会社のCLOは、お客様に「NO」と言えますか?
私は、これが最も重要だと思っています。
営業部長にNOと言う。
社内のお金を動かす。
そこまでは、社内改革です。
しかし物流は、社内だけで完結しません。
お客様がいます。
「翌日の午前中に届けてほしい」
「毎日納品してほしい」
「少量でも持ってきてほしい」
「この荷姿でなければ困る」
「昔から、そうしてもらっている」
こうした要望に対して、
CLOは、
「申し訳ありません。その条件では、これからの物流を維持できません」
と言えるでしょうか。
もちろん、お客様の要望を無視しろという話ではありません。
むしろ逆です。
単に「できません」と断るのではなく、
「翌々日なら安定してお届けできます」
「週5回を週3回にまとめれば、この条件で継続できます」
「この荷姿に変更していただければ、双方の作業負担を減らせます」
と、新しい取引条件を提案する。
これは、もはや物流改善でしょうか。
私は違うと思います。
経営です。
売り方を変える。
取引条件を変える。
お客様との関係を変える。
それによって、自社の物流を持続可能なものにする。
CLOとは、そこまで踏み込む仕事なのではないでしょうか。
もし、3つともできないのなら
もう一度、3つの質問を並べます。
あなたの会社のCLOは、営業部長に「NO」と言えますか?
あなたの会社のCLOは、会社のお金を動かせますか?
あなたの会社のCLOは、お客様に「NO」と言えますか?
もし、3つとも「NO」だったら。
その人をCLOと呼ぶことに、どんな意味があるのでしょうか。
私は、CLO制度そのものを批判しているわけではありません。
むしろ、大きなチャンスだと思っています。
これまで物流部門だけでは手をつけられなかった問題に、経営として取り組むためのきっかけができたからです。
しかし、肩書だけCLOをつくり、これまでと同じ権限、同じ予算、同じ部門間関係の中に置いたら、何も変わりません。
中長期計画を作る。
数字を報告する。
会議に出席する。
それで終わってしまいます。
本当に問われているのは、CLOではない
ここまで書いてきて、実は最後にもう一人、問われる人がいます。
経営者です。
営業部長にNOと言わせる。
会社のお金を動かさせる。
そして、ときには長年お付き合いしてきた大切なお客様にまでNOと言わせる。
その権限を、本当にCLOへ渡せるでしょうか。
「CLOを置きました」
ではありません。
「CLOに会社を動かす権限を渡しました」
と言えるかどうかです。
私は、ここに今回の制度の本当の意味があるように思います。
物流2027年問題は、物流の問題ではありません。
だから、その解決を物流部長だけに背負わせてもいけません。
営業、生産、購買、物流。
そして顧客との取引条件まで含めて、会社全体を見直す。
その仕事を誰に任せるのか。
そして、その人にどこまでの権限を渡すのか。
いま問われているのは、CLOの力量だけではありません。
CLOを本物の経営者にできるかどうか。
経営トップの覚悟が、問われているのだと思います。
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