――中小物流会社にこそ必要な「マーケター的営業」の心得
はじめに:物流営業に“新しい顔”が求められている
「物流の営業」と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか?
電話帳に片っ端から電話をかけ、空きスペースをがむしゃらに売り込む姿。
あるいは、過去の取引先に「何か出荷、ありませんか?」と御用聞きに回る姿。
そんな営業スタイルが、まだ現場には残っているかもしれません。
しかし、2025年。
物流の現場は、価格交渉の場ではなく、荷主の未来を共に考える“共創の場”になりつつあります。
その変化に対応できる営業とは、単なる“運賃提示マン”ではありません。
必要なのは、マーケター的な発想を持った営業マン。
つまり、「売る」のではなく、「相手の未来を見立てて、形にしてみせる」営業です。
では、その営業はどんな“習慣”を持っているのでしょうか?
習慣①:見込み客の「変化」を察知する観察眼
マーケティングとは、本質的には「変化の観察学」です。
特に、物流の現場では、「ほんのわずかな変化」が大きな営業チャンスにつながります。
- 出荷の頻度が月末に集中してきた
- 小口配送の比率が高くなっている
- 新しい製品が配送ラベルに紛れていた
- 倉庫での“動き”が多い特定SKUが現れた
こうした小さな兆しを、日々の接点から拾い上げ、
「この荷主さん、何か変わったな?」という違和感を大切にする。
それが、“売れる営業”が身につけている最初のマーケティング習慣です。
観察からすべてが始まります。
市場調査なんて大げさなことではなく、目の前の荷主の“ゆらぎ”を感じ取るのです。
習慣②:ターゲットごとに刺さる「問い」と「仮説」を持つ
変化を察知したら、次は「問い」を立てる。
なぜこの荷主は、EC比率が上がっているのか?
なぜ新SKUが増えているのか?
なぜ小ロットの出荷が増えているのか?
この“問い”を持たない営業は、変化を見ても何もできません。
そして、問いに対して自ら仮説を持ち、それを相手にぶつける勇気が必要です。
「御社は最近、小口配送の出荷が増えていませんか?
もしかすると、取引先の業態が変わってきているのではと感じました。」
この一言が、相手の心を動かします。
見られている、自社を理解してくれている、という感覚が信頼を生みます。
そして、仮説がズレていてもいいのです。
大事なのは、「考えてきてくれた」という姿勢。
“売れる営業”は、商談前に必ず1つ仮説を持ち込む。
この習慣が、提案型営業の土台になります。
習慣③:提案資料を“磨く”――型と感情の両立
そして最後に、“売れる営業”は、資料を自分で磨きます。
パワポのデザインが上手いかどうかではありません。
大事なのは「この資料は、この荷主のために書いた」と伝わること。
テンプレ資料をそのまま配る営業と、
相手のKPIや商圏を調べ、1ページ目に「あなたの課題」を据える営業。
どちらが刺さるかは明白です。
ここでポイントになるのが、
- 論理(型)に則った資料設計
- 相手の感情を動かす一言の挿入
という「型と感情の両立」です。
たとえば、
「この物流設計なら、御社の“欠品による営業クレーム”が20%減ると思います。」
といった、“定量化された提案+感情的な共感”が資料に仕込まれていれば、
相手は「これはうちの話だ」と感じてくれます。
営業資料とは、“事前の営業行為”そのもの。
磨く営業は、勝つ営業です。
なぜ中小物流会社に「マーケター的営業マン」が必要なのか?
ここまでの3つの習慣は、実はすべて「マーケティング思考の実践形」でもあります。
- 観察(市場を見る力)
- 仮説立案(分析と提案の力)
- 価値伝達(表現の力)
中小物流会社にこそ、このスキルが求められています。
なぜなら、中小企業は「ブランド」や「価格競争力」では、大手に勝てない。
では何で勝つのか?
“顧客との関係の深さ”と“提案の質”で勝つしかないのです。
マーケター的営業マンとは、単なる荷物の窓口ではありません。
荷主の戦略を物流で支える、“もう一人の経営企画”なのです。
まとめ:営業は、マーケティングの最前線だ
マーケティングは、広報や広告だけの話ではありません。
営業という現場でこそ、最も生きる「マーケティング習慣」があるのです。
- 顧客の変化を察知し
- 仮説を持って問いを立て
- 提案を磨いて届ける
この3つの習慣を、日々の営業活動に取り入れることで、
物流業の営業は、価格競争の消耗戦から脱却できます。
「営業をやめて、マーケターになれ」などとは申しません。
営業に“マーケティングの目”を宿せばいいのです。
そしてその目は、今日からでも鍛えられる。
▶ 次回予告(第4弾)
「物流会社のためのマーケティング設計入門」 ― 小さく始めて、大きく変える方法
- 認知 → 信頼 → 行動の3ステップを構造化する
- 「社内にマーケティング担当がいない」場合の始め方
- 小さなPDCAで動く営業会議、セミナー集客、事例公開の重要性
- 「売る力」は作れる!――2026年の戦い方とは?
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