なぜ、今“コンサルティング力”が物流会社に求められているのか?

マーケティング

はじめに:「売らない物流会社」は、もう通用しない

「営業はウチの仕事じゃない」
「紹介で回ってるから、あえて売り込む必要はない」
「付き合いのある荷主さんとの関係はうまくいってるから」

そう言っているうちは、まだよかった。
実際に、物流業界では“営業しなくても”成り立つ会社が多かった。だが今は違う。

2024年問題、ドライバー不足、運賃の高騰——
表面的にはそれらが業界の課題のように語られている。が、もっと深刻なのは、「売上が下がる理由がわからない」という経営の盲目さである。

顧客のニーズが変化し、紹介は減り、ネットで比較される時代に、
「ただ待つだけ」の姿勢がどれほど危ういか。今こそ問いたい。

“その売上減少、本当に現場のせいですか?”
“経営者自身が、売る力=コンサルティング力を忘れていませんか?”


売上の天井は、現場ではなく「経営の盲点」で決まっている

「営業マンがいないから、売れない」
「ウチは価格競争に弱いから」
「最近の荷主は厳しい」

それは本当に“外部環境”のせいだろうか?
よく見てみてほしい。現場は真面目に働いている。ドライバーも誠実だ。管理者も工夫している。

それでも売上が伸びない。ならば、こう言うしかない。

「売上の限界」を作っているのは、“売り方”を設計していない経営側である。

今の時代、コンサルティング力がなければ、物流会社は選ばれない。


「物流は紹介で決まる」信仰が崩壊している

かつては「信用」がすべてだった。
紹介、付き合い、地縁。ローカル物流は“顔の見える関係”でつながっていた。

だが今はどうか。

  • 担当者はまずWeb検索をする
  • 比較検討が当たり前
  • 数社に声をかけ、価格・対応・提案力をジャッジ
  • 紹介より「納得感」で業者を選ぶ

つまり、選ばれるためには「相談相手としての力=コンサルティング力」が問われているのだ。


セールスに取り組めない会社の“自己正当化”を暴く

営業や提案活動に消極的な会社は、よくこんなことを言う。

  • 「現場が忙しすぎて動けない」
  • 「営業担当がすぐ辞める」
  • 「提案してもどうせ価格勝負」
  • 「物流は、黙って仕事してればいい」

だが、それはすべて“思考停止”だ。
本当はこう言い換えられる。

  • 「売り方を設計できていない」
  • 「価値を言語化できていない」
  • 「顧客の悩みに寄り添っていない」
  • 「比較されても勝てる材料を持っていない」

つまり、コンサルティング的な発想とスキルが欠如しているだけなのだ。


コンサルティング力は「営業担当の資質」ではなく、「企業文化」である

「営業が苦手な人が多いんですよ」
「ウチには提案型の人材がいなくて」
「昔ながらのやり方しかできなくて」

よく聞く嘆きだが、それは“人”の問題ではない。
“文化”の問題である。

  • 倉庫現場で働くスタッフが、「なぜウチの作業は速いのか」を語れるか?
  • 配送ドライバーが、「どうやって荷主の現場で困りごとを拾うか」を意識しているか?
  • 管理者が、「それを提案書に仕立てて見える化する」能力を持っているか?

これらは、すべて“コンサルティング的視点”が社内にあるかどうかにかかっている。


「マーケティング理論」という甘い罠

最近よく耳にするマーケティング用語の数々——

  • ペルソナ設計
  • カスタマージャーニー
  • STP分析
  • ファネル戦略
  • SNS活用、動画施策、インフルエンサー…

耳障りがよく、言っていることは正しい。が、こう言いたい。

それ、本当に中小物流会社にとって“現実的”ですか?

誰がペルソナをつくる?
誰が顧客の心理フェーズを分析する?
SNSに投稿する時間はどこから出てくる?
ましてやインフルエンサーって、誰?

机上の理論に飛びついて、“やった気”になっているだけでは、荷主の課題は一切解決していない。


お客様の悩みに“向き合う力”こそが、真のコンサルティング力

物流会社に必要なのは、SNS戦略でも動画広告でもない。

  • 顧客が何に困っているのか?
  • それをどうやってヒアリングし、整理し、提案に昇華するか?
  • その提案は、どうやって数字や工程として伝えるか?

この“対話→整理→見える化”の流れ。
まさに、コンサルティングの基本プロセスそのものである。


コンサルティング力は、「経営の呼吸運動」である

売上が欲しいなら、現場を動かす前に“考え方”を変えるべきだ。
コンサルティング力とは——

  • 荷主の経営課題を発見する力
  • それに応じた物流改善策を設計する力
  • 社内に展開するスキルと体制をつくる力

そして何よりも、

その全体設計を、経営者自身が担う覚悟を持っているか?

ということである。


終わりに:物流会社は「サービス業」ではない。「助言業」である。

「サービスを売る」のではなく、
「課題を一緒に解決する伴走者」になる。
それが、これからの物流会社の生き方だ。

コンサルティング力とは、営業力の進化系であり、
単なる“案件獲得”を超えた、「顧客との共創」の力である。

そして、そのスタート地点は——
会社全体が「売ること」に意識を持つこと。


次回予告:「営業の現場が混乱している5つの理由」

次回は、現場のリアルに迫ります。
物流会社の営業がうまくいかないのは、単に人材の問題ではない。
もっと深い“構造的な欠陥”があります。

  • 顧客管理が属人化している
  • 見積もりが通らない
  • 営業人材が定着しない
  • 「お願い営業」から抜け出せない
  • 荷主の選定基準を読み誤っている

その“5つの真因”を、次回明らかにします。

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