― SNSに振り回されない。中小物流会社のための“現実的マーケティング”とは ―
なぜ今、物流会社に「マーケティングの再設計」が必要なのか
物流会社の経営者と話をしていると、必ずと言っていいほど、こんな言葉が出てきます。
「忙しいんですよ。とにかく」
これは決して誇張ではありません。
配車、ドライバー対応、倉庫トラブル、顧客対応、請求、採用、行政対応…。
しかも、これらは毎日必ず起こる。
そのうえで、
- 見積依頼が来れば社長が出る
- 紹介があれば社長が会う
- 新規案件は社長が詰める
結果として、社長の1日は「判断」と「対応」で埋まり、
「考える時間」だけが削られていくのです。
ここに、物流会社特有の難しさがあります。
現場が止まれば会社が止まる。
だから、経営を“考える仕事”が、いつも後回しになる。
物流業界が抱える「2つの構造的課題」
課題① 社長が“営業装置”になってしまう問題
中小物流会社の営業は、多くの場合「人」で成り立っています。
しかも、その中心にいるのが社長です。
これは裏を返せば、
- 信頼されている
- 経験がある
- 判断が早い
という強みでもあります。
しかし同時に、
社長が動かないと売上が生まれない構造でもあります。
この状態が続くと、社長の中にこんな感覚が芽生え始めます。
「誰かに任せたいけど、任せられない」
「教える時間があったら、自分でやった方が早い」
この“正しさ”が、実は会社の成長を静かに止めていきます。
課題② 1社依存という「見えにくい地雷」
もうひとつ、非常に多いのが売上の偏りです。
- 上位1社で売上の30〜40%
- 上位3社で売上の過半数
これは、決して珍しい話ではありません。
問題は、「今はうまくいっている」ことです。
うまくいっている間は、誰も手を付けません。
しかし、
- 荷主側の統廃合
- 生産拠点の再編
- 担当者の交代
こうした外部要因は、ある日突然やってきます。
そのとき初めて、
「新規をやってこなかったツケ」が、経営に重くのしかかります。
解決の方向性は「派手な打ち手」ではない
ここで、多くの社長が迷います。
「SNSをやらないとダメですか?」
「若い会社はみんな動画をやってますよね?」
結論から言えば、
中堅・中小物流会社が、今すぐSNSに注力する必要はありません。
理由は単純です。
物流会社の顧客は、SNSを見て衝動買いをしないからです。
必要なのは、
“検討される会社”になること。
つまり、
- 思い出される
- 比較対象に入る
- 話を聞いてもいいと思われる
この状態を、どう作るかです。
ステップ① 社長のセールス負担を減らすための「分解思考」
営業を「才能」だと思っている限り、分業はできません。
営業を「工程」として捉えた瞬間、見える景色が変わります。
営業活動を分解すると、実はこうなります。
- 誰に声をかけるか決める
- 情報を集める
- 興味を持たせる
- 話を聞く
- 条件を詰める
- 決断する
この中で、
社長でなければならないのは、5と6だけです。
それ以外は、
- 仕組み
- ルール
- テンプレート
で代替できます。
社長の経験は「現場で使う」のではなく、
型にして残す。
これが、営業を“会社の力”に変える第一歩です。
ステップ② 「1社依存」から抜け出す現実的な市場の切り方
新規顧客開拓というと、多くの人がこう考えます。
「今まで取っていない業界に行こう」
しかし、成功確率が高いのは真逆です。
**「今の強みを、少しだけズラす」**こと。
- 地域を半径30kmに絞る
- 荷姿を限定する
- 危険物・温調・小ロットなどに寄せる
こうしたズラし方は、
- 営業トークが明確になる
- 価格競争を避けやすい
- 社内オペレーションも崩れにくい
という利点があります。
ステップ③ SNSを使わない“直球マーケティング”の強さ
FAX-DMや紙媒体は、古いと思われがちです。
しかし物流業界では、今も有効な接点です。
理由はひとつ。
社長が自分のペースで読めるから。
重要なのは、
- 専門用語を使いすぎない
- 自社自慢をしない
- 相手の悩みから書き始める
この3点です。
FAX-DMは「売るため」ではなく、
「考えさせるため」に使う。
この視点があるかどうかで、反応は大きく変わります。
ステップ④ 顧客理解こそが、唯一の差別化になる
物流サービスは、真似されます。
設備も、価格も、いずれ追いつかれます。
それでも真似されないものがあります。
それが、顧客の内情をどこまで理解しているかです。
- なぜ、その在庫が動かないのか
- なぜ、その現場は人が定着しないのか
- なぜ、その担当者は判断が遅いのか
ここまで踏み込める物流会社は、多くありません。
だからこそ、
ここに踏み込めた会社は、簡単には切られません。
ステップ⑤ 「長く続く前提」で関係を設計する
物流は、短期決戦ではありません。
むしろ、時間を味方につけた会社が強い。
・定期的な情報共有
・業界動向の一言メモ
・節目での連絡
こうした“小さな接点”の積み重ねが、
価格よりも強い絆を作ります。
結論:派手なマーケティングより、壊れない仕組みを
中小物流会社に必要なのは、
- 流行
- 派手さ
- バズ
ではありません。
必要なのは、
- 社長が全部やらなくても回る構造
- 1社に依存しない売上の組み立て
- 静かに、しかし確実に積み上がる営業活動
この3つです。
もし、
「うちも、そろそろ何か変えないといけない」
そう感じているなら、
それは十分に“次の段階”に来ている証拠です。
次にやるべきこと(ヒント)
・自社の営業を工程で書き出してみる
・売上上位3社の割合を計算してみる
・「紹介が起きる理由」を言語化してみる
このどれか一つでもやった瞬間、
マーケティングは「他人事」ではなくなります。
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